Welcome to TAKAHAMA!(2024年10月)

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ボイスドラマの内容

設定

  • 主人公/翔(カケル)=20歳。大学生。高浜生まれ高浜育ち。小さな町が退屈で仕方がない。大学卒業後、早く東京に出て行きたいと考えている
  • Emily(エミリー)/=20歳。オーストラリアの大学生。翔の家をホストファミリーとしてでホームステイをするためにやってきた。実はエミリーが高浜を選んだのには理由があった

<シーン1/セントレアの空港ロビー>

■SE〜飛行機の離陸音〜空港ロビーの音

え?
女の子?
聞いてないよ〜

って、オレが聞かなかったんだっけ・・

「Welcome to TAKAHAMA!」って
超恥ずいボードを持ってるオレ。
ホームステイする留学生を迎えにきたんだけど。
大学が休みの日でよかったぁ。
こんな姿、友だちに見られたら、なんて言われるか。
まあ、いっか。
どうせ来年はここにはいない。
卒業したら東京いくんだし・・

「よ、よろしく
カ、カ・・カケルです」

なんだ、日本語話せるんじゃん。
すこ〜し安心。

<シーン2/車内〜セントレアから高浜へ>

■SE〜shの車内の走行音

「そ、そうですか。
でもなんで?高浜なんて・・
東京とか京都とか、もっといいとこいっぱいあるのに」

「見るところ、なんにもないですよ」

「いや、正真正銘高浜生まれ、高浜育ちです」

そう言いながら窓の方に顔を向ける。
車はちょうど衣浦大橋を渡り始めていた。

エイミーの顔がゆっくりと後方へ回転する。
瞳には、夕陽が映える細長い海が映っていた。

「え〜、そうかなあ。
あんなん、海じゃないじゃん」

great grandma?

なんだっけ?
え〜っと、グランマがおばあちゃんだから・・・
ひいおばあちゃん!?
へえ〜、そうなんだ〜。

衣浦大橋を渡り終えたとき、

「やきものの里 かわら美術館だよ」

「そ、そうだよ」

「え〜。
寄り道してたら、また母さんに怒られちゃう」

「あ〜もう。
ま、しゃあないか。母さん、ごめん」

でも、陶芸教室なんてやってたっけか?
あ、日曜のみ開催。
ラッキー、じゃなくてアンラッキーだわ。

<シーン3/かわら美術館〜陶芸教室>

■SE〜陶芸教室〜電動ろくろの音

陶芸、初めてって言ってた割になんか、サマになってるなあ。
粘土を練る手つきとか、どうしてなかなか。
ちょ、オレよりうまいんじゃね。
へ〜、いつもYouTubeとか見てたんだ。
にしても、大したもんだわ。
ちゃんとマグカップになってるよ。

「すごいよ。参加者の中で一番うまいんじゃないかな」

「焼き上がるまで2ヶ月くらいかかるから、できたら送ってあげるね」

次?
また高浜に来るつもりなんだ・・

それにしてもやきものって、こんなに人を幸せにできるんだな。
そういえばオレ、高浜で育ったのにやきもののこと、ちゃんと考えたことなかったわ。

興奮醒めやらぬエイミーを乗せて、吉浜の実家へ。
ちょうど菊まつりの準備で、人形小路には細工人形が飾ってある。

「細工人形だよ」

「え〜っと、crafted doll・・かな」

「そう・・・かな」

<シーン4/カケルの家〜仏間>

■SE〜おりんの音「ちーん」

実家にあがったエイミーは、なぜか仏壇の前へ。
さっきまでのような笑顔ではなく、まじめな表情。
目を閉じて手を合わせる。

ん?作法も知ってるのか?

まてまてまて。

ちょっと。・・・泣いてる!?

どういうこと?
それに、母さんもなんでエイミーを仏間に通す?

仏壇の中には位牌と遺影。
ひいおじいちゃんとひいおばあちゃんが仲良く肩を寄せて微笑んでいた。

オレだって会ったこともない2人に向かってブロンドの外国人が手を合わせている。
なんとも不思議な光景に、声をかけることもできなかった。

ホームステイの期間は2週間。
この短い間に、エイミーのリクエストでいろんなところへ行った。

人形小路。
おにみち。
観音寺の衣浦観音。
大山緑地の大たぬき。
稗田川の彼岸花。
そして専修坊。

あらためてエイミーに説明していくうちになんかヘンな気分になってくる。

あれ?
高浜って・・思ってたほど悪くない。

あっという間に、10日間が過ぎ、
エイミーが帰る日が近づいてきた。

<シーン5/おまんと祭り>

■SE〜祭りの前のざわめき

ホームステイ最後の日。
早朝から、エイミーのたっての希望で、春日神社へ。実家にあがったエイミーは、なぜか仏壇の前へ。
さっきまでのような笑顔ではなく、まじめな表情。
目を閉じて手を合わせる。

ん?作法も知ってるのか?

まてまてまて。

ちょっと。・・・泣いてる!?

どういうこと?
それに、母さんもなんでエイミーを仏間に通す?

仏壇の中には位牌と遺影。
ひいおじいちゃんとひいおばあちゃんが
仲良く肩を寄せて微笑んでいた。

オレだって会ったこともない2人に向かって
ブロンドの外国人が手を合わせている。
なんとも不思議な光景に、声をかけることもできなかった。

ホームステイの期間は2週間。
この短い間に、エイミーのリクエストでいろんなところへ行った。

人形小路。
おにみち。
観音寺の衣浦観音。
大山緑地の大たぬき。
稗田川の彼岸花。
そして専修坊。

あらためてエイミーに説明していくうちに
なんかヘンな気分になってくる。

あれ?
高浜って・・思ってたほど悪くない。

あっという間に、10日間が過ぎ、
エイミーが帰る日が近づいてきた。
神社には、地元の人々が集まり、祭りの熱気が漂っていた。

そう。この日は、おまんと祭りの1日目。

翔は、エイミーが迷わないように、彼女の手を引いて人混みの中を進む。
エイミーの目は輝き、祭りの喧騒に興奮を隠せない。

「馬の背におっきな飾りがあるだろ?」

「あれはね、神様の依代(よりしろ)
なんて言うんだろ・・・え〜っと、アバター?」

すげ。
エイミー、留学前にしっかり調べてきたのかな。

オレが説明するより先に、祭りが始まった。

■SE〜おまんと祭りの喧騒

「おまんと祭りは200年以上前から続いているんだ」
「豊作を願って雨乞いをする神事なんだよ」

感動するエイミーを見て、少しだけ誇らしく思う。
いつの間にか、この祭りを楽しんでいる自分に気づいた。

そういえば、子供の頃、おじいちゃんに連れられてきて以来、
全然見ていなかった。

■SE〜おまんと祭りの喧騒(若者が馬に飛びつくシーン)

激しく翔ける蹄の音。
馬に飛びつく若者(わかいしゅう)の雄叫び。
観客の歓声。
神楽の舞。

祭りの喧騒の中、手を繋いだエイミーの指に力が入る。
オレも力をこめて握り返した。
こんなに、厳粛な神事、勇壮な祭りにどうしてもっと真剣に向き合わなかったんだろう。

複雑な感情に支配される僕の横で、エイミーはポケットから何かを取り出した。
それは・・・写真?

え?
どういうこと?
泣いてる・・?

エイミーの声は祭りの喧騒にかき消されていく。

詳しい話をきいたのは、セントレアへ送る車の中。

エイミーのひいおばあちゃんは終戦の年、1945年、海外の医療班として高浜にやってきた。
そのとき、高浜の人たちに親切にしてもらったことが忘れられなかったそうだ。
特によくしてくれたのが、下宿させてくれた、うちのひいおじいちゃんとひいおばあちゃん!

だからエイミーは高浜を・・
もしかして、母さんもグルか。

で、エイミーのひいおばあちゃんは高浜の美味しい郷土料理を食べ、高浜の文化を楽しんだ。
おまんと祭りは、高浜の人たちからいつも聞かされていた自慢の祭り。
それが、終戦のどたばたで、中止に。
楽しみにしていたひいおばあちゃんは、ひどく残念がって必ず死ぬ前に見に行きたい!
って、いつもエイミーに言ってたんだって。

そんな・・
知らなかった・・

高浜の町が、おまんと祭りがこんなに遠い国の人から愛されていたなんて。

エイミーに会う前と今とで、高浜という言葉の響きが変わった。

79年前につながっていた心のように、高浜の潮風が、過去と現在(いま)を結んでいく。

<シーン6/2か月後>

■SE〜波の音と鳥のさえずり

親愛なるエイミー

お元気ですか
エイミーと過ごした日から2か月経ちました

おまたせ
マグカップが焼き上がったよ

この手紙と一緒に写真も送るから
ひいおじいちゃんとひいおばあちゃんの写真
母さんに頼んで焼き増ししてもらったんだ

エイミーのひいおばあちゃんに、
うちのひいおばあちゃんとひいおじいちゃんも再会させてください
もう一度絆が紡がれますように
今度は僕がオーストラリアへ遊びにいくから
また会えるといいな

追伸
東京へ行くのはやめて、
市内のWebマーケティングの会社で働くことにしました
いまは高浜の名所やグルメを紹介するサイトを運用しているよ

高浜のいいところ、いろんな人に知ってほしいんだ
だっていいところでしょ、高浜って!

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